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あらゆる用途に対応するラティス(格子)構造: OECHSLER社:ーMagicsにより、初の革新的な3Dプリント技術でラティス生成を可能にー

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3Dプリンターで作られた格子模様の様々な家具

人間の骨と蜂の巣には共通点があります。それは、ラティス(格子)状の組織をフレームとして利用していることです。自然界は長い間、ラティス(格子)のようなオープンセル(細胞同士が隙間を持ち、密閉されていない)構造をうまく取り入れてきました。ところが、このような複雑な形状を製造するには、適切な技術、専門知識、ソフトウェアがなければ難しいというのが現状です。そこで紹介するのがOECHSLER社です。同社は、積層造形(AM)のノウハウ、3Dプリント設計ツール、そしてMaterialise Magicsを駆使して、あらゆる設計要件に対応する再現可能な格子の素晴らしいライブラリを構築しました。Magicsを活用することで、顧客のAMパーツや カスタムラティスを、初めてであっても、いつでも正しく3Dプリントすることができるようになりました。

OECHSLER社は、特に3Dプリントにおいて、その技術を積極的に導入していることで知られています。2010年に通常のプロトタイピングの造形を始めてから、2019年末までのわずか10年足らずの間に、年間約200万個のAMによる製品を大量生産するまでになりました。この期間、同社は自転車用ヘルメット、家具から、ラティスよりアイデアを取り入れた自動車用クッションシートのような複雑なデザインまで、さまざまな産業で製品を増産し、それに加えて製品の複雑なデザインにも力を入れてきました。

「革新を超える」が私たちのモットーです。―AM(アディティブ・マニュファクチャリング)は、ラティス(格子)がもたらす設計の自由度と合わせて、既存の製品や従来の製造方法を見直すのに最適な技術です。」と、OECHSLER社のマーケティング・コミュニケーション・マネージャー、Marc Baldauf氏は言います。

AMラティス:製品デザインの未来を形づくる

2020 年には、OECHSLER社 はさまざまな市場向けの製品づくりの経験から、顧客向けの標準的なパーツの製造にとどまらず、幅広い製品の生産を可能にしました。これは、より複雑なデザインを生み出すには理想的なタイミングでした。

「あの年は、COVID-19のことだけではなく、当社にとって極めて重要な年でした。私たちは、お客様のニーズに応えるだけでなく、独自のソリューションを推進するためにAMを活用することに決めました。開発とプロセス・エンジニアリングの限界をさらに高め、家具、バックパック、インソールなど、さまざまなラティス(格子)構造からインスピレーションを得た製品の生産を拡大しました。」と、OECHSLER社のアディティブ・マニュファクチャリング ラティス・プログラム管理責任者であるAndreas Knöchel氏は述べています。

3Dプリンターで作られた格子模様の椅子
3Dプリンターで作られた格子模様の椅子のクローズアップ

3Dプリントされたラティス(格子)からインスピレーションを受けたOECHSLER社の家具。画像提供:OECHSLER社

「当社は、お客様側でデザインした予め定義された部品の製造から、当社で設計、テスト、検証を行うといった専門のコンポーネンツ製造へと移行していきました。これらの部品は、OECHSLERの開発、製造能力を実証し、当社の3Dプリントソリューションが将来の製品にどのように適用されるかを示しました。」

デザイン修正をする場合、Magicsを使って修正する方が、CADツールにわざわざ戻って修正するよりも4倍ぐらい速くなると思います。

— OECHSLER社、アディティブマニュファクチャリング・ラティス・プログラム管理責任者、Andreas Knöchel氏

さまざまな用途の製品を作るようになったことで、ラティス(格子)という特殊な構造設計の専門知識を身につけることができました。「お客さまの中には、特定の条件に基づいて造形を希望される方もいらっしゃいます。しかし、もしお客様の方で十分なアイデアがない場合は、当社の独自のアルゴリズムを使用してカスタムデザインを開発、新しいラティスを作ることも可能です」とAndreas氏は話します。

その結果、複雑なラティス(格子)構造と製品開発はOECHSLER社のAM部門の中核的な強みとなり、チームにとって重要なものとなりました。そして今、OECHSLER社のAM部門は再び転換期を迎え、そのポートフォリオに技術的な要素を加えているところです。

「OECHSLERのやり方は他社とは違います。他社では、技術的な部品から始めて開発段階に進むのに対して、当社は逆の方法を取りました。私たちは複雑な開発、複雑な製品からスタートしました。現在は、異なる形状や サイズからなる定型の事前開発済みの部品を追加しています。しかし当社の目標はシンプルです。お客様に優れた品質の製品を提供することです。部品が単純であっても同じです。 私たちはお客様のニーズに合わせて設計します。当社のAMパーツは射出成形品に匹敵します」とAndreas氏は強調しています。

成功のための繰り返しの作業:ラティス・データベースとMagicsが生産性とコスト削減を促進

数年前に行った基礎作業のおかげで、チームは幅広いサービスを提供できます。「私たちは機能を持たないデザインの作成もしましたが、同時に生成したすべての新しいラティス(格子)の主な目的と特性にも深く入り込みました。私たちは数え切れないほどの繰り返しの作業を行い、多くのデザインをテスト、造形、測定してきた結果、今、膨大なデータベースを持つことができたのです。」

この膨大なラティス(格子)コレクション(強度、硬度、多孔性などの基準に基づく)は、OECHSLER社が費用対効果に優れ、汎用性の高いパターンを迅速かつ大規模に作ることができることを意味しています。「以前は、細部を変更するなどの要件に合ったツールがありませんでした。そこで、私たちは独自のアルゴリズムを構築し、定期的に機能を追加、改善しています。Magicsは、粉末床溶融技術を使用して3Dプリントするのに適したデザイン済みの部品を処理するための主要なツールです。」

製作の後処理段階で格子デザインを清掃する人
OECHSLER社のラティス(格子)のデータベースと3DPの専門知識により、様々な複雑な形状やデザインを生成することが可能です。画像提供:OECHSLER社

チームはMagicsを3つの異なる目的で使用しています。1つ目はちょっとしたデザイン調整で、既存のラティス構造を素早く調整します。2つ目は、造形の際に失敗する可能性のある問題を特定することで、その問題を未然に防ぎ、無駄を省いてコストを削減することです。そして最後に、このツールは効率的にパーツをネスト(3D自動配置)し、OECHSLER社内の使用可能な装置に最適に部品を分配します。これにより、優れたパーツ品質を維持しながら、各装置の能力を最大限に引き出します。

Materialise Magicsを使って2台のデスクトップ・コンピュータの画面を見る男性
OECHSLER社はMagicsを使って既存のラティス(格子)構造を微調整し、造形の失敗を引き起こす可能性のある問題を特定します。画像提供:OECHSLER社

「何百万ものサーフェスと何十万もの支柱を分析しなければならないので、あらゆるところに課題があります。Magicsは、投げかけられるすべての問題を見つけ出します。万が一Magicsが支柱を修正できない場合、基本的にその構造は造形時に完全に壊れてしまいます。最適化と防止は別として、ネスティング(自動配置)においてMagicsは私たちにとって不可欠なツールです。実際、それが私たちの最大のニーズでもあります。これら3つの主要な機能は、最終的な造形ボリュームがすでに整理された状態で提供され、それによってデザインを迅速に造形現場のHP Multi Jet Fusionプリンターに送信できるようにしています。」

当社はMagicsを24時間365日使用しています。 もしMagicsにアクセスできなくなれば、新しいラティス(格子)デザインを検証することができなくなり、私たちのパウダーベッド施設から新しいものは生まれないでしょう。

— OECHSLER社、積層造形ラティス・プログラム管理責任者、Andreas Knöchel氏

Magicsは、2020年に粉末床溶融結合法の開発者が加わった際に勧められ、以来、チームはそのツールに感銘を受けています。「Magicsを選択したのは、その時に必要性が生じたからであり、今では他のソフトを使うことはありません。Magicsを使うことで、ネスティング(3D自動配置)効率を最大限に高めることができます。さらに、CADソフトウェアに戻ることなく、小さな調整を行うことができます。これは信じられないほどの時間の節約になります。CADツールで設計を修正しながらCADツールとMagicsを行ったり来たりするよりも、Magicsで修正をした方が4倍ほど速くなると推測しています。」

これらの品質により、OECHSLER社は顧客の時間とコストを節約し、FTR(First Time Right)原則に基づいた高品質な造形物を提供し、顧客に満足いただけるデザインや、産業および製品デザインを変革するラティス(格子)を生み出すことができます。

3Dプリントされた格子構造をサンドブラストする機械
HP MJFプリンターの画像

HP MJFプリンターによる独特なラティス(格子)デザインの3Dプリント 画像提供:OECHSLER社

羊の皮をかぶったオオカミ:名誉あるRed Dot賞を2度受賞、生産規模を拡大、そして未来へ向けて

同社は2年連続でRed Dot Design賞を受賞し、3Dプリントの専門家や愛好家を驚かせました。OECHSLER社は2022年、3Dプリントの背面パッドを備えたトレッキング用バックパック で「Best of the Best」デザインコンセプト部門を受賞しています。. 

そして同社は、Jack Wolfskin社の新しい3Dエアロライズ・バックパックの製造に協力することで、今年の 「Product Design 賞」 受賞に貢献しました。このバックパックは、耐久性、軽量性、快適性、通気性を兼ね備えた3Dプリントのキャリングシステムを採用しており、これらの特徴は審査員に高い印象を与えました。「私たちの最近の受賞は、Product Design賞でした。この受賞は、私たちの革新的なラティスがビジネスに具体的な成功事例を提供できることを示しています」とMarc Baldauf氏は話します。

Jack Wolfskinの黒いバックパックの正面
Jack Wolfskinの黒いバックパックの背面には、緑色の3Dプリントが施されている。

Jack Wolfskinのバックパック「Aerorise(エアロライズ)40」が2023年度Red Dot Product Design 賞を受賞。画像提供:OECHSLER社

同社は多くの業界に進出してきましたが、次に本格的に参入したいのは自動車産業です。「私たちはこの分野をイノベーションのための場だと考えています。それが私たちの目指すところです」とAndreasは言います。「ただし、AMへの切り替えには説得が必要です。問題がそれほど大きくない場合、製造業者はAMではなく元の方法、この場合は伝統的な製造方法に戻してしまうでしょう」。OECHSLER社はまた、自動車産業の厳しい開発サイクルを乗り切るという課題も抱えています。 

「開発サイクルの初期に準備が整っている必要があります。自動車開発は5~6年のスパンで動いているため、それほど多くの機会が与えられているわけではありません。それが私たちの課題ですが、私たちはこれを達成できると確信しています。私たちは、機械的および化学的仕様のような、車載の最も厳しい要件を満たす部品を用意しています。また、独自の品質管理プロセスを通して部品を製造しています。そのため、Magicsは我々にとって非常に重要なのです。私たちは最高水準の再現性のある製品を製造する必要があり、それはMagicsでのみ可能です。私たちのチームは24時間365日Magicsを使用しています。もしMagicsにアクセスできなくなれば、新しいラティス(格子)のデザインを検証することができなくなります。私たちのパウダーベッド施設から新しいものは生まれないでしょう」。

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3Dプリンターによる格子構造を採用したカーシートの側面図
3Dプリンターによる格子構造を採用したカーシートのクローズアップ

Lattice(格子)からヒントを得てオーダーメイドされた自動車用シート。画像提供:OECHSLER社

社内でのMagicsへの支持を背景に、全チームがMagics 27に力を入れているのは当然です。「全チームがMagicsを日常的に使用しています。現在は最新バージョンへのアップグレード作業を進めています。OECHSLER社にとって、AMは膨大な新規顧客基盤をもたらし、さらに革新的な製品を生み出すことを可能にしました。3Dプリントは私たちにとって輝く灯台であり、ある意味でMagicsは私たちの灯台守です。当社にとっては中核製品なのです」。


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