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持続可能性・ 計測・不確実性: 2020年における3Dプリントのトレンド
マテリアライズは2020年に創業30周年を迎えます。30年前、基本的な形状を造形することに苦戦していた新生技術の3Dプリントは現在、従来の製造プロセスや概念すら覆すような業界改革ともいえるほどの成長を遂げてきました。マテリアライズはこれまでの30年間で蓄積してきた知識と経験を基に、2020年における業界のテーマやトレンドについて考えていきたいと思います。
1. 持続可能な3Dプリントに
近年、多国籍企業の影響力、企業の社会的責任についての関心が高まっている中、3Dプリント業界でも、その技術が及ぼす社会や環境への配慮を考慮する必要がでてきています。マテリアライズは、お客様にとって役立つソフトウェアを提供する際や、新しい製品や技術を出す際には、持続可能性も意識する必要があると考えています。
3Dプリントは、企業に対して社会的にも環境的にも持続可能な製造手法を提供しています。この技術は分散生産を通して地域企業を活性化したらり、パーソナライズされたケアで人々の健康や福祉を改善したり、より質の高い仕事を可能にします。同時に、3Dプリントは大量のカスタマイズと最適化で、無駄の少ない製造をサポートします。その結果、多くの企業が3Dプリントを持続可能性のプラス要因としてみなしていますが、それだけでは足りないのです。
“私たちのいる業界は、社会へのマイナス影響を減らすための革新的な新しい技術開発をすることで、さらに多くのことを可能にしてくれるでしょう。”マテリアライズCEOのフリード。ヴァンクランは言います。“こういった課題に気づき、リサイクル粉末の活用を増やし、エネルギー消費や将来の職場を創造していく求心力のあるリーダー達の存在を楽しみにしています。”
問題は、3Dプリントがより持続可能な技術かどうか、ではなく、3Dプリントをより持続可能なものにするには何ができるのか、ということです。
2. 不確定要素がチャンスに
将来の経済が不透明なため、メーカーはコストカットやリスクの軽減をより強化することになるでしょう。需要の変動に敏感に対応している業界のメーカーは特に。2000年後半に起きた経済危機では、試作品向け造形が主となっていた当時の3Dプリント業界は大きな影響を受けました。企業がR&Dへの投資を控え、試作品造形需要が激減したのが原因でした。.
“しかし時代は変わりました” 造形部門執行役員のユルゲン・ローダスは言います。 “3Dプリントはもう試作品造形だけではありません。今では最終製品を作るために使用される技術になりました。技術が成熟し信頼が高まり、より多くのメーカーが3Dプリントに頼り利益を得ています。3Dプリントはもはやコストやリスクではなく、チャンスを意味しています。”
従来の製造業務に比べると、少ない資本で業務を開始できるのが3Dプリントです。オンデマンドで製造するということは、在庫をもつリスクが減り、国内製造することで、関税の影響を受けることも避けられます。
不透明な経済だからこそ、3Dプリント製造を始めコストとリスクを減らそうとする企業が増えてくるのではないでしょうか。
3. AMでAIの基礎を
データは力です。3Dプリントの導入が進み、業務プロセスの改善が進んだため、私たちはこれまで以上にデータ収集を始めました。
しかし、データ収集だけではなく、データの活用も必要です。
大容量のデータ処理をし、そのデータ活用をするのにAIは非常に強力で有効です。AIをフル活用するためには、大容量のデータ用意だけでなく、プロセスの理解も重要となります。この場合は3Dプリントの造形プロセスです。
“近年では確かにAIが3Dプリントの応用を促している例があります” とSoftware部門の執行役員であるステファン・モッテは言います。 “本当の意味でAIをAMの中でフル活用するには、3Dプリントプロセスのパラメーターやアルゴリズムなど、さらなる開発・理解が必要でしょう。そしてそのための研究や技術革新、そして異業種間コラボへの投資も必要となるでしょう。”
私たちが本当の意味で3Dプリントのプロセスを理解し、その中でAIの可能性を最大限に活用ができると、3Dプリントはさらなる活躍ができるでしょう。
4. 改革の風
近年、3Dプリントの応用はどんどん進んでいます。より速い造形機、新しい材料、より多様な後処理方法。これらの要素があいまって、新しい革新的なものを作り出すのです。
“これは3Dプリント業界にとっては素晴らしいことです” イノベーション担当者 クリステル・ヴァン・デン・バーグは言います。“改善された生産プロセスで既存アプリケーションの強化だけでなく、これまで考えられなかったアプリケーションの開発さえ可能になるでしょう”
例えばカスタマイズ用の新しいTPU素材。TPUは既存の材料ではありましたが、不安定だったため、使用の拡張が難しい材料でした。HPのMJF造形機、BASFの新しいTPUとマテリアライズの造形及び設計知識の組み合わせは、フットウェア、スポーツ用具、安全器具などのアプリケーション開発に相乗効果を発揮します。
3Dプリンター、ソフトウェア、材料の促進は業界内に絶好の機会を生みます。これまで、消費者は購入した製品の製造プロセスを知らないということは当たり前でした。3Dプリントのパフォーマンスが向上し個人向けのカスタマイズが進んでいる今、3Dプリントは消費者にとって遠い存在ではなくなり、さらにはこれまで想像もしていなかった形状の製品を楽しむことができるようになるのではないでしょうか。
5. 後処理自動化への投資
3Dプリントの業務が軌道に乗ると、次は自動化への業務プロセスの変化が求められます。しかし、ほとんどが手作業で行われる後処理の壁が存在するため、業務自動化への道はシンプルではありません。後処理のために人を増やすとコストや作業の不安定要素が高まり、信頼性はあがりません。生産を増やすためには、後処理工程を自動化するしかないのです。
特に大量にカスタマイズ生産を考えているならなおさらです。パーソナライズされたフットウェアでは、顧客によって好みの色が異なります。そうなると造形プロセスは複雑化しやすくなります。
“後処理自動化のタイミングは今がまさにその時でしょう。” 最高技術責任者のバート・ヴァン・ダー・シューレンは言います。“マテリアライズでは後処理自動化を実現させるために投資を行ってきました。最近の取り組みの例としては、医療用生産現場において、可能な限り高品質を確保するために洗浄ライン全体をロボット化しました。”
幸いなことに、自動化とロボット化が 促進されたIndustry 4.0では、後工程の自動化に向けて新たな方法を作成しています。それには時間、労力、投資が必要で、その基礎には3Dプリントの拡大が前提とされています。もちろんそれは大前提です。だからこそ、後処理自動化のための投資が必要不可欠なのです。
2020年の3Dプリントとは
“2020年をひとことで表現するとすれば、それは ‘持続可能性’。もちろん社会・環境に配慮したものです。景気の先行きは不透明ですが、3Dプリントは自動化された後処理やAIなどの技術とともに、最終製品や新しいアプリケーションを通して、企業が経済的に持続できる機会を提供するでしょう。”
— マテリアライズCEO フリード・ヴァンクラン
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