EXPERT INSIGHT
スマートマニュファクチャリングのためにデータセキュリティだけでは不十分な理由
数年前より、Materialiseは、ソフトウェア全体を統合し、ソフトウェアツールのプラットフォームへのアクセスをクラウドベースで行うことでお客様にご利用いただけるモデルへと進化していくロードマップを描き始めました。このプラットフォーム戦略は、製造業における重要なトレンドに基づいています:従来の製造工程から切り離された試作だけでなく、中小規模の連続生産、マスカスタマイゼーションなど、3Dプリントの活用が進んでいることです。つまり、3Dプリントをモノづくり全体のプロセスの一つとして統合していくといった不可逆的な動きです。
当社の新しいCO-AMプラットフォームは、このような生産シフトに対応するために開発されたもので、企業がコネクテッド・マニュファクチャリング・プロセスの一環として3Dプリント業務の計画、管理、最適化を可能にするあらゆるソフトウェアツールにクラウドでアクセスできるようにします。
さらに最近になって、もう一つの重要な傾向が見られるようになりました。コロナ危機、グローバルサプライチェーン問題、地政学的緊張、サステナビリティ―への関心の高まりといったシステミックショックにより、従来の集中生産モデルの脆弱性が明らかになりました。3D プリントのようなスマートでデジタルな生産技術は、顧客の近くにある複数の小規模な生産拠点への移行を可能にします。これは、未来の工場が一つの中央の場所のみに拠点を置かなくなることを示す明確なサインです。
この新しいデジタルで分散した生産環境は、一つの重要な資産である「データ」を中心に展開されています。データがより大きな役割を担い、産業界の企業、サプライヤー、請負業者間で共有されるようになるにつれ、データセキュリティの重要性も増しています。
今日のデジタル時代において、データセキュリティはあらゆる形態の製造業にとって重要です。従来の製造業では、さまざまな工程のステップを統合したり、効率や 最善の方法に関する情報を保存・共有したり、生産ラインの自動化機能を制御するためにデータを使用していました。また、スマートマニュファクチャリングでは、3Dプリントと同様に、企業独自の設計や デジタル資産を業界の他の企業やサプライヤーと共有する必要もあります。そのため、世界中に分散した複数のデジタル生産拠点でのスマートマニュファクチャリングは、企業が設計したデータの安全性を確保した上で、初めて本格的に実現されるのです。
しかし、3Dプリントでは、それ以上のものがあります。3D プリントでは、材料と製品が同時につくられます。そのため、3Dプリントでは従来のものよりも複雑になっていると言えるでしょう。3Dプリントしたパーツの生産を数千、数百万単位で拡大する予定の製造業者は、効率的で信頼性が高く、複数の生産拠点で繰り返し使用できるように、独自のプリントプロセスを最適化し微調整する必要があります。すべてのパーツがどこで生産されても同じ品質であることを確認するためのスマートな生産プロセスを構築することは、複雑で時間がかかりますが、企業が競合他社より一歩先に進むことを可能にします。そのため、データセキュリティに加え、データインテグリティもデジタルマニュファクチャリングを採用する企業にとって最重要課題となっています。
分散型アディティブ・マニュファクチャリングにおけるデータセキュリティとデータインテグリティのニーズの高まりに対応するため、Materialiseが、複雑なサプライチェーンにおけるデジタル部品の流れを暗号化、提供、追跡するソフトウェアを開発するIdentify3D社を買収したというニュースをお伝えできることを嬉しく思っています。今回の買収により、当社はCO-AMプラットフォーム内に新たなセキュリティ層を追加し、市場で最も安全な3Dプリント用ソフトウェアプラットフォームとする予定です。企業がプロセスのあらゆる段階で設計データを保護し、エンジニアが設計と特定の製造基準を結びつけることを可能にすることで、当社は、デジタルで分散した生産環境の一部として3Dプリント業務を拡大する新しい機会を創り出します。
CO-AMは、使用する材料や3Dプリンター、パーツ自体の製造に関するパラメータを固定する新しい機能を備えており、効率的で高品質な製造に必要なデータの共有を実現します。 偽造を防止し、悪意や不注意によって変更された、規格外の、あるいは認証されていないパーツが実際のサプライチェーンに入り込むことができないようにすることで、分散型大量生産のための3Dプリントの可能性を引き出すための新たな障害となるものを取り除くことができるのです。
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著者について
Fried Vancraen