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2021年の3Dプリントの展望: 抜本的なリニューアルの年
2021年に3Dプリント業界が40年目に突入し、私たちは抜本的なリニューアルの可能性を秘めた時代に突入しています。COVID-19の危機は、あらゆる産業に多大な影響を及ぼし、今までとは違った価値観を必要とする新しい時代の波が私たちを駆り立て続けています。イノベーションとクリエイティビティ―の境界を押し広げる必要があります。新しい時代、つまりコロナ後の 新しいスタンダードについて考える必要があります。
これを踏まえて、3Dプリントは、2021年に3つの重要なトレンド、すなわち、ものづくりを見直すために初心に戻ること、製品だけでなく3Dプリンター自体のパーソナライゼーションを可能にすること、そして新しいソリューションを迅速に生み出すこと、から始まります。
COVID-19 has shown us that going forward we need to go back to the drawing board, focus on personalization, and waste no time in creating solutions.
このような変化に世界が遭遇したのは、実はこれが初めてではありません。AppleがiPodを発表したのは、ドットコムバブルが崩壊した直後でした。Airbnbはリーマンショックの最中に登場し、Alibabaは2003年のSARSが流行の真っ只中にオンラインマーケットプレイスを立ち上げました。
「この大きな変化の時代にあって、私たちはあえて大胆なステップを踏み、将来性のないものは捨てなければなりません。アディティブ・マニュファクチャリング(以下AM)のようなテクノロジーの核となる価値観を活用して、意味のあるインパクトを与える新しい考え方や行動に向かう必要がある」と、MaterialiseのCEO兼創業者のFried Vancraenは述べています。
私たちは、AMは、人々がより良い選択をするための力を与えることで、意味を成すと信じています。COVID-19の危機は、AMが新たな課題に対して有意義な解決策を提供できること示しました。しかし、これまでのところ、これらの解決策は、この技術の強みを真に発揮するものではありませんでした。AMの価値は、他の製造方法にはないものを作ることができることにあります。
AMはカスタマイズが可能で、より少ないコンポーネントで、無駄を省いた3Dプリントが可能なため、サステナブルなソリューションを提供することができます。 このような特性を生かした有意義なアプリケーションを見つけ続け、AMが提供するあらゆるものをより広く認知してもらうことが、この業界を強く継承していく鍵になります。
今、現在でも我々はCOVIDの危機に直面しておりますが、来年のトレンドは、より強く、より柔軟で、3Dプリント製品やコンポーネントがより多くの価値をもたらす可能性への準備ができていることを示しています。
この価値は、多くの場合、チェーンの最初の段階で、重要な顧客データや要件をデジタルで取り込むことによって生み出されることを忘れてはなりません。バリューチェーンの終点では、3Dプリントがこの価値を製品にパッケージ化します。AppleやAirbnb、Alibabaが行ったように、バリューチェーンを再考してみましょう。
Friedは、「企業が今までとは違うことをする必要があることに気づくと、AMは企業に変化をもたらす力を与えてくれます。このようにして、AMの意義は、現在のAMに何が可能かではなく、これからAMが何を可能にしてくれるのか ということになるのです」と力強く語っています。
1. ゼロからのリスタート
私たちの周りでは、COVID-19の危機がデジタル化を加速させています。同時に、地球規模で発生している気候変動の危機は、経済・産業システムの現状を見直すべきだという危機感を私たちに与え続けています。このような危機が続くということは、もはやこれまでのやり方を続けることができないことを意味しています。
産業界のあり方や、新たな課題に対する解決策をもう一度、見直す必要があります。
新型コロナ危機、気候変動等は、産業を一歩、二歩と前進するための段階的なステップ以上のものを求めます。技術革新のプロセスを段階的に進めるだけでは、AMのような革新的なテクノロジーが影響を与える余地はほとんどありません。しかし、ソリューションへの取り組み方をあらためて見直すことで、根本的に新しい設計や革新的なプロセスへの扉を開くことができます。
例えば、エアバス社を例に挙げてみましょう。エアバス社は最近、水素エンジンを搭載した商用ジェット機の開発を加速し、ハイブリッドエンジンの開発を完全にスキップさせる計画を明らかにしました。この大胆な計画は、2035年までに、排出ガスゼロの、気候変動に左右されない航空機を世界で初めて実現することを意味しています。このような革新的なコンセプトを実現するために、AMのようなテクノロジーは大きな役割を果たすことができるのです。
世界的な危機感を背景に、産業界は技術革新のスピードアップを図っていますが、このような環境は、設計や製造の分野でAMが真価を発揮する好機といえるでしょう。
“企業がこれまでとは違うやり方をする必要があると認識したとき、AMは企業に変化をもたらす力を与えてくれます。このようにして、AMの意義は、現在のAMに何が可能かではなく、これからAMが何を可能にしてくれるのかということになるのです”
— Fried Vancraen, Materialise CEO and Founder
MaterialiseのCTOであるBart Van der Schuerenは次のように述べています。「AMは、従来の製造技術の制約や制限から設計者を解放し、製品ではなくソリューションに焦点を当てることを支援します。その結果、AMは性能、軽量化、時間、コスト面での優位性を生み出すことができます。これまでAMは、その可能性を示すこだけでした。今こそ、それを実現するチャンスなのです」
新たなスタートを切るということは、何もないところから始めるということではありません。原点に戻ることで、新しい技術にチャンスを与える自由が生まれます。新しい視点と可能性を引き出す。そのとき、私たちが生み出すことのできる変化は、私たちの想像力にかかっているのです。
2. プロセスのパーソナライズ(個別化)
「3Dプリントのユニークで優れた特徴は、製品のカスタマイズにかかるコストを大幅に削減できることであることは、一般的に知られており、受け入れられています。あまり知られておらず、見落とされがちなのは、エンジニアやオペレータが造形プロセスを個別にパーソナライズして最適化できるようにすることの重要性です」と、Materialise社の取締役会長であるPeter Leysは述べています。
なぜ、プロセスのカスタマイズが重要なのでしょうか?AMの理想的な世界は、オペレーターがスタートボタンを押すだけで、マシンにあらかじめインストールされているパラメータセットに基づいて、必要な製品を造形する世界ではないでしょうか?
1つの標準的な造形プロセスがすべての用途・アプリケーションに適合するという幻想は、間違っており、近視眼的で、しかも危険で退屈なものです。
まず、3Dプリントは非常に柔軟な技術であるため、製造されている製品に関係なく、標準的なプロセスのみの導入の場合、能力が十分に生かされないという定義があります。もしあなたがアディティブ・マニュファクチャリングを最大限に利用したいのであれば、造形しようとしている製品に合わせて、マシンとプロセスのパラメータをひとつひとつ微調整しなければなりません。プロトタイピングの場合、この可能性と必要性はそれほど重要ではありませんでした。特定の製品に造形プロセスを適応させ、調整する努力は、少量バッチの製品で減価償却できるかどうか、というところでした。AMがますます大量生産に使われるようになると、特定の製品に最適なプロセスを考える必要性がますます必要性がますます高まるのは明らかです。
第二に、すべての製品に対して、ひとつの工程で対応するという考え方では、パーソナライゼーションとローカリゼーションが両立しません。言い方を変えれば 3Dプリンターは、現地のオペレータが現地の状況に合わせてプロセスを調整する自由と能力を持っている場合にのみ、分散型の製造環境で展開することができます。一般的には、一次パラメータを中央で設定し、より具体的な二次パラメータを各拠点のエンジニアが現地のニーズに応じて調整することになります。
最後に、オペレータの知識と専門知識の付加価値を生産プロセスに与えることができない世界は、ボタンを押すだけの退屈な世界になってしまいます。既定の標準的なプロセスだけでは、3Dプリントの設備は、生産プロセスに個人的な専門知識や経験を加えて、他のオペレータとの差別化を図るできません。それは競争の少ない世界となり、危険でもあります。競争の欠如は、結局のところ、イノベーションの欠如を意味します。
つまり、オペレータが3D造形プロセスを微調整、最適化、個別化できるようになればなるほど、3Dプリントの価値が発揮されることになるのです。そうすれば、3Dプリントはより速く、より安く、より信頼性の高いものになるはずです。しかし、そこに到達するためには、3Dプリントは、何よりもまず、よりパーソナルなものにならなければなりません。
3. 最短期間で3Dプリンティングを始める
MaterialiseのMedical部門担当 副社長のBrigitte de Vetは、「COVID-19は、世界を常に緊急の状況に追い込んでいます。医療従事者や一般消費者は、大量生産に依存するグローバルな市場モデルの結果として、必要不可欠な医療製品と日常的な消費財の両方の不足と品質問題に直面しています。これまで当たり前だと思っていたものがサプライチェーンの分断により、手に入らなくなったり、手に入ったとしても、満足のいかない品質の低い消費財である等、新しいソリューションを迅速に開発する必要があります。」と述べています。
デジタル化はあらゆる分野で加速しており、企業は供給ギャップを埋める、リモートワーク、ローカルソリューションといったこの新しい常識に適応するために役立つテクノロジーに投資しています。しかし、この導入のパーツとして、彼らは選択をする必要があり、リスク、コスト、迅速な投資収益率(ROI)を基準に選択することになります。
AM は、短期的な ROI、低コスト製造、低リスクを実現できるデジタルテクノロジーの ひとつですが、その入り口は通常、長いラーニングカーブが伴います。
10年前にAMの導入プロセスを開始し、このテクノロジーへ大きくシフトできる立場にある企業もありますが、AMを初めて導入する企業には、もはや時間の余裕はありません。
Brigitteは次のように続けます。「その結果、AMを導入する企業や施設等に最小のコスト・時間で、最大の効果を得るような、コンサルティングサービスのトレンドが高まってきています。例えば、医療の世界では、個別化医療の価値はよく知られていますが、不確実性は一切許されませんが、新しいソリューションは、それが安全で効果的であり、質の高いケアが可能であるという、力強いエビデンスを提供する必要があります。コンサルティングサービスは、3Dプリンティングソリューションが “何ができて“ ”何ができないのか“、そしてそれぞれの異なるケースに必要な適切な製造方法についての専門的な知識を共有することで、このような大規模な投資のリスクを最小限に抑え、タイムラインを加速させるのに役立ちます。」
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